ピアニストのグレン・グールドは夏目漱石の「草枕」を何度も読んでいたそうです。
僕は初めて読んだとき、薄い文庫本にも関わらず、全くもってさっぱり理解不可能でした。
あまりにも理解できなかったので数年後リトライ。ディテールはわからないながらも、そこに流れる芸術の理想を追いもとめる表現に凄みを感じました。
と同時に現世を超越した普遍的な思想というのがあるように感じた記憶があります。
グールドは、本質的には芸術は癒しである、と語っていたそうですが、若いときには技巧に走り、その境地に至らなかったのが、草枕を読み、そこへ至ったのかもしれません。(推測です)
芸術というのは表現の具象化で、そこには色々な美が存在します。
美とは、単にきれいとは別物で、どれだけそこに魂がこもっているかという軸でよいかと思います。
確かに技術の美しさに心を打たれることは多々ありますが、逆に下手だからこそ勇気を得たり、愛情を感じたりすることもあります。
最近、「表現をする」ということについて考えています。
仕事にしても趣味にしても、人間関係にしても、上手であることの前に、好きである気持ちが大切で、そこに喜びを感じていなくては人の心には伝わらないのだと思います。
草枕の理想郷とはまったく違うかもしれませんが、気持ち(魂)を素直に表現できることが一番の美しい芸術ではないでしょうか。良きにつけ悪しきにつけ自分自身の存在を100%肯定できた上で表現する。
それが出来る人は美しくあり、僕は早くそこにたどり着きたいと努力しています。